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仙台高等裁判所 昭和50年(う)65号 判決

本店所在地

宮城県仙台市錦町二丁目五番一号

東北中央化学株式会社

右代表取締役

渡辺猛

右の者に対する法人税法違反被告事件について、昭和五〇年三月四日仙台地方裁判所が言い渡した判決に対し、検査官から控訴の申立があつたので、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

原判決中被告会社に関する部分を破棄する。

被告会社を罰金四〇〇万円に処する。

理由

本件控訴の趣意は、仙台地方検察庁検察官検事桑原一右名義の控訴趣意書および仙台高等検察庁検察官検事宮沢源造名義の控訴趣意書訂正申立書記載のとおりであり、これに対する答弁は弁護人太田幸作名義の答弁書記載のとおりであるから、これをここに引用する。

控訴趣意(量刑不当の主張)について

所論にかんがみ記録を精査し、当審における事実取調の結果を参酌すると、本件は被告会社(合成樹脂製の食品容器の販売を目的とする株式会社)の代表取締役渡辺猛において、同会社運営資金の拡充を図るため所得を秘匿して法人税を免れることを企て、昭和四五年八月一日から同四八年七月三一日までの三事業年度にわたつて原判示のとおり同会社の実際の所得金額が合計六七、八〇〇、九九八円、これに対する正規の法人税額が合計二四、一二八、九〇〇円であるにも拘らず、同会社経理担当者黒田黒治に命じて、公表帳簿に架空仕入を計上したり、或は売上や期末たな卸商品の一部の記載を除外するなどの不正な操作をさせて、これに基づき、所轄仙台北税務署に対し、虚偽の各法人税確定申告書(その申告所得金額は合計一七、七一七、九五五円、これに対する法人税額は合計五、七三八、九〇〇円とするもの)を提出し、もって総額一八、三九〇、〇〇〇円に及ぶ法人税を納入期限に納付しないで逋脱したという事案であることが認められ、その罪質、犯行の手口、逋脱の税額、実際の所得に対する秘匿の割合(平均約七四%)、正規の法人税額に対する逋脱税額の割合(平均約七六%)等の諸般の事情を考慮すると、被告会社代表者が逋脱にあたり用いた不正行為の反社会性は著しいものというべきであり、他面、被告会社は創立後間がなく(昭和四五年二月一〇日設立登記)、経済的基盤が薄弱で、自己資金の拡充を図る必要があつたこと、本件逋脱にかかる本税、重加算税、延滞税等を完納したこと、また原判決後の事業運営面においても、値引販売を余儀なくされているなど困難な情況を迎えていることなどのほか弁護人所論の被告会社に有利な諸事情を斟酌しても、原判決の量刑(罰金二〇〇万円)は、軽きに過ぎ不当であると認められる。論旨は理由がある。

よつて刑事訴訟法三九七条、三八一条により原判決中被告会社に関する部分を破棄し、同法四〇〇条但書にしたがつてさらに次のとおり判決する。

原判決の認定した事実および適用した法条にしたがい、被告会社を罰金四〇〇万円に処し、主文のとおり判決する。

検察官 宮沢源造 出席

(裁判長裁判官 菅間英男 裁判官 林田益太郎 裁判官 鈴木健嗣朗)

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